生命環境化学専攻北山研究室の1年生が、令和2年度資源・素材学会九州支部 若手研究者および技術者研究発表会において「最優秀賞」を受賞しました。これは、2020年5月に同学会九州支部の若手研究者及び技術者研究概要集に発表した論文に対し受賞したのもので、テーマは「高熱伝導窒化ケイ素セラミックスの開発研究」です。
これは、学生が学部生の時より研究テーマとしているセラミックスに関するもので、パワーデバイス等の回路基板に使用される新たな素材開発に向けた評価実験の研究です。
高熱伝導窒化ケイ素セラミックスの開発研究
近年、エレクトロニクスの進歩により、電力の変換・制御を高効率で行うパワーデバイスが急速に普及しており、複数のパワーデバイスをまとめたパワーモジュールの回路基板には、高い絶縁性、熱伝導率、放熱性、耐熱性が要求されている。窒化ケイ素(Si3N4)は、高い強度と靭性を併せ持ち、約 200Wm-1K-1の理論熱伝導率を持つとされているが、実際の熱伝導率はAl2O3(20~30 Wm-1K-1)と同程度に留まっていた。その要因として、Si3N4 粒子内に固溶した O や Al などの格子欠陥によるフォノン散乱や低熱伝導率の粒界相の存在が挙げられる。Si3N4 は難焼結性であるため焼結助剤の添加が必須であり、希土類酸化物が焼結助剤として用いられてきた。これまでの研究により、Si3N4 の理論熱伝導率に近い焼結体の作製には成功したが、 2000℃に近い超高温と数十時間に亘る長時間の熱処理による粒成長に依存しているのが現状である。今後、増大する高熱伝導Si3N4 焼結体の需要に向けて、工業的な、すなわち、より低い焼結温度とより短い熱処理時間による高熱伝導化が必須である。本研究は、従来の希土類酸化物に替わる新たな焼結助剤として、酸化物以外の化合物を検討することを目的とする。既に、Zr ケイ化物が焼結助剤として検討され、熱伝導率の向上効果が確認されたが、Zr より電気的に陽性な希土類のケイ化物は未だ検討されていない。希土類ケイ化物を Si3N4の焼結助剤として用いることによって、原料中に含まれる不純物酸素を除去し固溶酸素を低減させる「脱酸素焼結助剤」としての効果が期待されるが、これまで希土類ケイ化物の化学的安定性に関する報告はない。
本研究の第一の目的は、YSi2 を合成し、その化学的安定性を評価することにある。窒化ケイ素の粉体プロセシング中でも分解しない程度にYSi2 の化学的安定性が高いことが判明した場合、YSi2 を唯一の焼結助剤として用い、反応焼結・ポスト焼結法によってYSi2の焼結助剤としての効果を調査することを、本研究の第二の目的とした。
現在は、本研究で作製したYSi2助剤は固溶酸素を低減させる効果だけに期待し、新たに、液相を生成する焼結助剤として、先行研究で使用されてきた MgO を添加し、Si3N4 焼結体の緻密化、高熱伝導化を目指す。
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