情報通信工学科 内田法彦教授は2011年に岩手県で東日本大震災を経験し、この経験から危険度の高い被災者の情報を遅延なく優先的に伝えるシステムと新たな通信法(データトリアージ法)の開発に取り組んでいます。災害時に大量に発生する安否情報の中で、緊急度の高い情報はどれか?情報を選り分けて伝える通信法を確立することで、混乱の少ない効率的な救助活動につなげることが出来ます
内田研究室が実際に作っている通信アプリ
学内で実証実験をしています。
優先的に人命守る「データトリアージ」とは?
携帯電話大手キャリアなどが普及を進めている災害時の安否情報システムなどでは、人命に直結する救助を求める人の情報と「無事」を伝える単なる連絡などが一律に扱われ、通信網の中で区別されることなくオペレーターの待つサーバーまで流れていきます。この情報に「重要度」を付加することでより早期に対応するべき救助情報などをいち早くオペレーターに届きやすくする。災害時に医療機関などで「治療」や「搬送」の選別を行うトリアージから発想した新しいデータ送信方法です。
内田研究室がデータトリアージを実現するために用いるのが、近年注目されている「D2D」(デバイスtoデバイス)通信です。基地局を通さず、私たちが持っているスマートフォンやIoT機器の端末間を直接結び、基地局が被災した場合でも確実な通信を実現します。
「重要度」はスマホのセンサーで「静体感知」
被災者の緊急度をどうやって識別するのか?そもそも、特に重要度の高い、けがをして動けない人をどうやって割り出すのか?この判断には私たちが持っているスマートフォンを使います。今やほとんど全ての人が持っているスマートフォンはジャイロセンサー、位置情報(GPS)、温度センサーなど様々なセンサーの集合体です。これらのスマホ内臓のセンサーから被災者の緊急度の新しい指標となる「静体状態」を割り出し、情報に優先度をつけます。※特許第6180008号(2017年登録)
内田研究室では、実際にD2D通信を用いて「データトリアージ」「靜体情報付加」を行った上で被災者情報を伝えるアプリケーションを開発しており、これらのシステムは2020年にサービス開始が目指されている通信の5G(第5世代移動通信システム)の広がりと共にさらに進歩した上での実用化が目指されていて、注目されています。
内田 法彦教授
- 情報工学部 情報通信工学科
- 工学研究科 修士課程 情報通信工学専攻
博士後期課程 知能情報システム工学専攻 - 研究分野:計算機システム・ネットワーク
科研費(科学研究助成事業)
■研究課題名:通信途絶時の飛躍的遅延性能と伝達率を向上する次世代耐遅延性災害通信システム
■補助事業期間 2019~2021
■研究課題名:通信途絶時の飛躍的遅延性能と伝達率を向上する次世代耐遅延性災害通信システム
■補助事業期間 2019~2021
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