2023年9月、崇城大学において開催された第76回電気・情報関係学会九州支部連合大会において、情報工学専攻1年 正代研究室の学生の研究発表が優れているとして情報処理学会九州支部「奨励賞」を受賞しました。受賞した研究のタイトルは「互いに異なる変数ラベルを持つ順序木構造パターンに対する効率のよい並列アルゴリズム」です。木構造データベースを対象とするパターン照合問題において、理論と実験を用いて検討したものが評価されました。
「互いに異なる変数ラベルを持つ順序木構造パターンに対する効率のよい並列アルゴリズム」
グラフ理論において、HTML/XMLのようなデータは関係データベースのように明確な構造を持つわけではありませんが、タグ付けによる順序木構造を持ちます。順序木構造データから構造的なパターンを発見するために、Suzuki et al.[3]は、線形順序項木パターン(Linear Ordered Term Tree Pattern、LOTT-パターンと略す)を提案しました。このLOTT-パターンは、任意の順序木を代入することができる構造的変数を持ちます。LOTT-パターンは、順序木構造データに現れる複数の共通部分順序木構造を、構造的変数により繋げられた順序木構造パターンとして表現します。したがって、複数の共通部分順序木構造を集合として順序木構造データのパターンとみなすよりも高い表現力を持つグラフパターンとなります。
LOTT-パターンのパターン称号問題とは、LOTT-パターンtと順序木Tが与えられたとき、tがTにマッチするか否かを決定する問題です。効率のよい並列アルゴリズムとは、入力サイズの多項式個のプロセッサを持つ並列ランダムアクセス機械(Parallel Random Access Machine、RRAMと略す)上で、入力サイズの多項式対数時間で計算するアルゴリズムのことをいいます[1,2]。本論文では、変数次数2のLOTT-パターンのパターン照合問題に対する効率のよい並列アルゴリズムを扱います。
- Greenlaw,R.,Hoover,H.J.,and Ruzzo,W.L.:Limits to Parallel Computation:P-Completeness Theory,Oxford University Press(1995).
- 宮野 悟:並列アルゴリズム,近代科学社(1993).
- Suzuki,Y.,Shoudai,T.,Uchida,T.,and Miyahara,T.:Ordered term tree languages which are polynomial time inductively inferable from positive data,Theoretical Computer Science,Vol.350,pp.63-90(2006)