未来に向けた持続可能な新しい道筋を提言
※この研究論文はJournal of Industrial Ecologyにオンライン掲載されました
※12023年民間航空機市場予測: https://www.boeing.com/resources/boeingdotcom/market/assets/downloads/2023-Commercial-Market-Outlook-Executive-Summary.pdf
※2国土交通省:輸送量あたりの二酸化炭素の排出量
研究のポイント
- 将来技術が十分導入できない場合、ネット・ゼロ・エミッションの達成のためには、飛行距離の抑制が有効な策であり、その中でも最も現実的なプランでは2050年までに最大27%の飛行距離抑制が必要になることが明らかに。
- 近場の移動は飛行機の代替手段を検討、オンラインビジネス会議の維持などライフスタイルの変化が必要に
未来技術の導入をあてにするだけでは、排出削減達成は不可能
IATA(国際航空運送協会)が定める2050年までに実質排出量ゼロを達成するためのアクションを示したロードマップは、化石由来の原料を使用しない持続可能な航空燃料「SAF」の使用や水素やバッテリーを動力源とした航空機の実現を前提としています。ただ、この研究のシミュレーションでは、将来におけるSAFの普及コストも計算した上で、排出削減目標を達成するためにより現実的な方法として、距離抑制を提案します。航空機の機体寿命サイクルなど航空会社側のコストも検討したうえで、18パターンの中から効率的な方法を提案しました。
達成には18%~27%の距離削減が必要。効率化・代替交通手段の導入は必然に
2050年のネットゼロ達成のために、18パターンの中から2つを検討。▼低コストですが抑制距離が多く必要になるパターン(a)と▼高コストですが抑制距離が最も少ないパターン(b)を試算しました。いずれも2050年までに飛行距離の18%~27%の抑制が必要になります。さらにこの距離抑制を実現するためにするために必要な要素として、①搭乗率の最大化②国際線の座席数増加③ビジネス利用削減④国内線の鉄道への代替⑤国際線レジャー利用の削減について検討しました。a、bいずれのパターンでも①国内・国際全ての便の搭乗率100%、②座席数の変更(20%増)を行ったとしても、航空需要が増え続けた場合、距離抑制は絶対に必要な条件になってきます。この試算ではさらに③ビジネス利用(国内35%、国際20%と仮定)はオンラインで代替し、④国内線の鉄道への代替(島部以外)⑤2046年以降は国際線のレジャー利用を平均69%減らすことを想定しました。これによって初めて「ネットゼロ」は達成できます。a、bいずれの試算でも最終的に2050年の年間飛行距離は5億キロ以下、新型コロナウイルスの影響で日本の総飛行距離が大きく落ち込んだ2020年(8億3200万キロ)以下の水準に制限する必要があります。「ネットゼロ」達成の極めて厳しい道のりが浮き彫りになりました。
CO2削減のためにできること・受け入れるべきことを提言
試算から航空産業の「ネット・ゼロ」は極めて厳しい道のりである事が明らかになりました。目標を達成するには未来技術をあてにして変化を先送りするのではなく、実現の可能性とコストを慎重に検討しながらも、企業や社会の変化を即座に起こすことが必要だと説いています。
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