※研究論文はInternational Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activityに掲載。
- 1日の中で座位行動時間10分間を、同じ時間の中高強度身体活動に置き換えると、要介護化リスクが約12%低減できる可能性が明らかに⇒「すきま時間」を使った運動「ちょい活」の推進
- 1日あたりの座位行動時間が長くなるほど、将来の要介護化リスクは高くなることが分かった。
ただし、この関連は1日あたりの中高強度身体活動時間の長さにも影響を受けていることも分かった
研究では2011年に篠栗町の高齢者に3軸加速度計内蔵の活動量計を装着してもらい、1週間の身体活動や座位行動を計測。その後9年間に渡って対象者を追跡して、介護保険制度における要介護・要支援認定の有無などを調査しました。これらのデータを用いて、1日あたりの座位行動時間と将来の要介護化リスクとの関連を解析したところ、統計的に有意な関連が認められました。しかし、1日あたりの中高強度身体活動時間を調整因子として解析に加えると、関連は有意ではなくなり、この関連が1日あたりの座位行動時間の長さだけではなく、中高強度身体活動時間の長さにも影響を受けることが分かりました。また、本研究では座位行動を身体活動に置き換えた場合に、要介護化リスクを低減する効果が認められるかどうかを解析しました。その結果、1日あたりの座位行動時間を10分間、同じ時間の中高強度身体活動(例えばジョギングや階段上り)に置き換えると、要介護化リスクが約12%低減できる可能性があることが分かりました。
(軽強度身体活動との置き換えではこの結果は得られず、置き換えるべき身体活動は中強度以上であるべきことも分かりました。)
研究グループは今回得られた結果が、福工大と篠栗町が近年住民に推奨している「ちょい活」による要介護化予防効果を示す一つのエビデンスであると考えています。ちょい活とは息が軽く弾むかそれ以上の強度の身体活動(=中高強度身体活動)を、1日の「すきま時間」を使ってちょこちょこ行うことを指します。福岡工業大学と篠栗町は、高齢者の主体的な介護予防の啓発を目的に今年度実施している共同事業「ささぐり元気もん活動」においても、このエビデンスを有効活用しながら、町における「ちょい活」の普及・促進を積極的に進めています。
「中高強度」の身体活動とは
息が軽く弾むか、それ以上の強さの身体活動のこと。国立健康・栄養研究所が定める※強度表で「3メッツ」以上に定義される身体活動。運動やスポーツではなくても、・犬の散歩・自転車での買い物・家の掃除・子供や孫と遊ぶなどの生活活動も含まれます。
※https://www.nibiohn.go.jp/files/2011mets.pdf
「ちょい活」のすすめ!など健康情報を発信。篠栗元気もん情報2023
福岡工業大学と篠栗町では、2011年から篠栗町の高齢者の方々2,629人を対象に、健康状態や生活習慣と要介護認定などのヘルスアウトカムとの関連を追跡する「篠栗元気もん調査」を行っています。今年度は「ささぐり元気もん活動」の一環として、この調査から得られた健康づくりに関するより良い知見を高齢者の皆様に向けて発信する、「篠栗元気もん情報2023」にも取り組んでいます。こうした活動を通して、「ちょい活」のさらなる普及にも取り組んでいきたいと考えています。
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