2021年12月にオンラインにて開催された「2021年度電気設備学会学生研究発表会」において、電気工学科井上研究室4年生の発表論文が、一般社団法人電子情報通信学会 「2021年度 連合大会講演奨励賞」を受賞しました。講演のタイトルは「MATLAB/Simulinkを用いた超電導限流器のモデル開発と限流効果に関する研究」で、電気系統において故障電流を抑制するための電力機器である限流器に超電導を用いた場合のシミュレーションを行ったものです。
「MATLAB/Simulinkを用いた超電導限流器のモデル開発と限流効果に関する研究」
超電導は特定の物質を冷却し、極低温になると電気抵抗がゼロとなる現象であり、この性質は完全導電性とも呼ばれる。電気抵抗がゼロとなるため、電流を流しても電圧降下は起こらず、すなわち熱発生もないため通電に伴うエネルギー損失がない。
しかしながら、超電導体へ流せる電流には限界があり、これを臨界電流I_cという。I_c以下では電気抵抗ゼロで電流を流すことができるが、I_cを超えると電気抵抗が発生し、常電導状態へと転移する。この転移が電流に対して急峻に生じることから、限流器としての応用が検討されている。限流器とは電力系統において故障電流を抑制するための電力機器である。限流器に求められる性能として、通常時はインピーダンスが小さく事故発生時には大きくなることが挙げられる。超電導特性を用いた超電導限流器は通常時の損失をゼロ抵抗により激減させることができ、また事故が起こると自ら事故電流を検出し、高インピーダンスを発生することから、限流器に適した性能を有していると言える。しかし超電導状態を保持するためには、冷却のためのエネルギーを要する。このため、現在開発研究が進められている限流器は、ロシアの220kV高温超電導限流器のような大容量限流器が主となっている。
一方、近年では液体窒素などの極低温寒剤を大量に保有しているプラントにおいて、超電導ケーブルを設置し送電損失を削減する試みが行われており、小規模な電力系統においても超電導機器を導入することが検討され始めている。
そこで我々は、再生可能エネルギーを含む数 MWクラスの電力系統を持つマイクログリッドに導入することを想定した、超電導限流器のモデル開発及び、系統安定化のための最適化について検討を行っている。
今回、超電導限流器の短絡事故動作をシミュレートするための要素試験と電力系統のシミュレーション回路設計を行った。
そこで我々は、再生可能エネルギーを含む数 MWクラスの電力系統を持つマイクログリッドに導入することを想定した、超電導限流器のモデル開発及び、系統安定化のための最適化について検討を行っている。
今回、超電導限流器の短絡事故動作をシミュレートするための要素試験と電力系統のシミュレーション回路設計を行った。