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軽石は「減圧」で海中に沈める 新しい処理方法を発明

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海洋投棄で「環境負荷なし」のソリューションを

小笠原諸島の海底火山が噴火した影響で、沖縄県を中心に海岸周辺に流れ着いた軽石が深刻な問題になっています。福岡工業大学生命環境化学科の久保研究室(久保裕也准教授・下條光浩講師)ではこの軽石について「減圧容器に入れて海水より重くする処理を行い、自然に海中に沈める」という新しい処理方法を発明しました。(特許出願済)。
軽石は漁業や観光業など地元産業に大きな影響を与えていますが、特に回収後の処理や利用について未だ多くの課題があります。久保研究室の考案した処理方法は軽石の浮遊性を無くして海洋投棄を可能にするもので、環境負荷も低く、実現可能性が高いソリューションであると考えています。情報をお伝え頂く事で、社会課題解決の第一歩につながればと考えています。宜しくお願い申しあげます。

軽石は「浮く」ことが問題。気体を抜けば沈む

軽石は本来、海水より比重が重い鉱物ですが、マグマが凝集する際に発生した気体の経路や、体積収縮で生じた引け巣内部に微細な気体を含んでいるため見かけ比重が海水よりも軽くなって浮遊しています。久保研究室の手法は、軽石を砕いて減圧容器に入れることで軽石内の微細な気体を抜き、軽石内部に海水が侵入する経路を作ります。その後大気圧に戻すと、いったん海水が侵入した軽石は比重が重くなり、自然に海に沈下します。
軽石を砕いて減圧容器に入れ、真空状態にします。軽石内部の微細な気体が抜け、浸水経路が出来ます。

減圧状態の容器内に海水を入れ、その後大気圧に戻すと軽石内部には急速に水が浸透し、軽石は沈みます。

軽石は陸上に回収した後、どう処理してその後の処分や利活用を行うかについて未だ課題があります。
内部に含まれるNaCl(塩)を除去できないと埋め立てても土壌塩害の懸念があります。また、鉄骨や建物材料の腐食を起こす可能性があり、セメントや砂への利用も難しいのが現状です。処理方法としては真水での洗浄などが考えられますが、漂着している軽石は膨大な量があり輸送や処理にかかるコストや労力の面で課題があります。
軽石を水深のある海底に沈める本手法は労力も少なく済み、環境への影響もないと考えられます。

実験結果について

軽石の入った容器を真空ポンプで減圧し(真空に近い状態まで減圧)、5分間静置。
その後5分間かけて容器内に海水を入れ、ポンプを停止させて大気圧に戻すと軽石は容器底に沈下します。
軽石を様々な大きさに砕いて実験を行なったところ、直径2ミリ前後に砕いた軽石の場合、本手法によって70~80%が沈下することがわかりました。軽石の気体の入り方には個体差がありますが、久保研究室で検証したところ、条件(径の大きさ)によって40%~99%の軽石を沈められることが実証済みです。
動画のサムネイル

想定できる実際の処理方法

現在検討されている回収、処理方法は陸上処理を前提としており、埋め立てや利活用も高いコストが必要になります。本処理方法は減圧処理して海中投棄するのみであり、コストは大幅に削減できます。
この処理方法を実現するためには、まず大型の減圧容器を備えた処理船を外洋で航行させます。そこに軽石を運び、場所を変えながら処理した軽石を海底に投棄するというルートが想定できます。

※本発明については沖縄県にもアイデア提供を行っています。

取材のお申込み・本件発信部署

福岡工業大学 広報課(担当:池田)
TEL:092-606-0607

取材のご依頼は下記申込書(PDF)をご記入のうえ、
FAX(092-606-7357)またはメール(kouhou@fit.ac.jp)にて本学広報課にご送信ください。


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