前期を通じての「遠隔授業」継続にあたって
新入生、在学生の皆さん、遠隔授業にも慣れて学びを深めていることと思います。すでにお知らせしておりました今月からの入構制限の段階的解除に向けて、対面授業の受講や先生や友人との再会、そして新入生の皆さんにとっては新たな仲間との出会いを心待ちにして、まだまだ不自由な環境のもと、学習に励んでいる姿が目に浮かびます。
しかしながら本日は少し残念なお話しをしなければなりません。全国的には5月25日までにすべての自治体で「緊急事態宣言」が解除されて、徐々に日常生活が戻りつつあります。そのような中、すでにご承知のように本福岡県では北九州市で連日2桁にも及ぶ新型コロナウイルス感染者が確認されており、「第2波」襲来との懸念が強まっています。
本学は北九州市の主要地域とJR鹿児島本線で直結していることもあり、この地域や周辺に在住している500名を超える皆さんがこれから毎日通学することになります。学内では可能な限りの感染防止策を講じて入構解禁に備えてはいますが、通学の皆さんは登下校の電車内や道すがら、感染についての危険にさらされ、大きな不安を抱えることになります。また北九州市に限らず、いずれの地域でも同様の事態が起こりうるものと大変危惧されるものになっています。
このような状況の中、仮に現状が落ち着き予定通り学内入構を解禁し、対面授業を本格化したとしても、通学圏のどこかで感染者が増加した場合、再度入構禁止の措置を取らざるを得ないことも想定されます。そこで皆さんの大切な学びを不安定なものにしないため、6月22日からに予定していた「学内入構の全面解禁」と「すべての授業の対面での実施」を断念し、前期を通じて遠隔授業を継続することと決断いたしました。但し「実験・実習など実技を伴う授業」は、予定されていた通り6月8日から、また「卒業研究」(工学部・情報工学部)やゼミナールⅢ(社会環境学部)は6月1日からの解禁とし、詳細についてはmyFITにてお知らせすることとします。また、PC(コンピュータ)やインターネット環境が整っていない皆さんにつきましては大学内のPC演習室を利用可能となっておりますが、今回の決断に至っては、対面授業の全面解禁を待ちわびていた皆さんの心情を思い諮り、断腸の念を禁じえません。
幸いなことに先生方の大きな尽力と工夫により、遠隔授業は大きな混乱もなく、順調に進んでおります。最も重要になる皆さんとの「双方向性の確保」についてもmyFITの掲示板機能など所定の仕組みを利用しておおよそは実現できていると聞いています。しかし一部では連絡がとれない、課題に対して反応がない学生がいるとの心配について耳にすることがあります。どうか早めに授業への参加度を高め、学びを本格化させてください。できれば実験・実習などで登校する機会を利用して先生を訪ねたり、友人に相談して理解を深めてください。
特に新入生の皆さんには、新たな友との「学びのコミュニティ」創出の機会を阻んでしまうことになり、大変心苦しく思っています。すでに学内では、オンライン上で先輩学生が新入生ならではの悩みや疑問に応える取組みが行われ、多くの皆さんが参加しておりました。6月中旬からはそれらの機能に加え、学習に関する相談窓口を充実することにしています。肝心な大学での学びのスタートに遅れを生じないよう積極的な利用を望みます。
新型コロナウイルスの今後の感染拡大防止にあたっては、様々な場面で「新たな生活様式」が求められることになります。同様に大学での学びについても「新たな学習様式」が必要になると考えます。対面授業ではつい聞き逃していた事柄についても、遠隔授業ではコンテンツを繰り返し視聴することで、知識の定着につなげている事例も数多く伺っています。また掲示板機能などでの質問や意見もこれまでよりも鋭く、具体的になったとの先生からの感想も聞いています。主体性や自律性を常に意識した学びを実行することで対面授業に劣らぬ知識や技能を身に着けてもらいたく考えます。
皆さんにはもうしばらくの不自由や苦労をかけることになります。しかし「ピンチをチャンスに」してください。「艱難汝を玉にす」心の底から再会や出会いを喜び合える時、皆さんの成長した姿に触れることができることを心待ちにしています
2020年6月1日福岡工業大学・同短期大学部学長下村輝夫