高エントロピー合金の超伝導体としての実用機能性向上へ
福岡工業大学電気工学科の北川研究室は、新しい高エントロピー合金超伝導体であるHfMoNbTiZrを発見しました。 HfMoNbTiZrの発見で高エントロピー合金超伝導体同士の比較検討が初めて可能になったことで、高エントロピー合金超伝導体の特性の新たな理解と、実用性向上に向けて前進をもたらしました。
※研究成果はJournal of Alloys and Compounds(IF:6.371)にも掲載されています。
※本研究は東京都立大学・水口佳一准教授、九州産業大学・西嵜照和教授との共同研究です。
※研究成果はJournal of Alloys and Compounds(IF:6.371)にも掲載されています。
※本研究は東京都立大学・水口佳一准教授、九州産業大学・西嵜照和教授との共同研究です。
複数の構成元素が同程度の割合で合金を形成する「高エントロピー合金」はエネルギー貯蔵、放射線耐性、腐食耐性、生体適合性など様々な機能性を持っていて、世界中で活発に研究が行われています。また、高エントロピー合金には超伝導性を持つものもあり、臨界電流密度が非常に大きなものも報告され、実用面でも注目されています。
新しい高エントロピー合金超伝導体であるHfMoNbTiZrの発見によって、異なる高エントロピー合金超伝導体を比較検討し、高エントロピー合金の超伝導体としての特性をより詳しく分析することが可能になりました。
新しい高エントロピー合金超伝導体であるHfMoNbTiZrの発見によって、異なる高エントロピー合金超伝導体を比較検討し、高エントロピー合金の超伝導体としての特性をより詳しく分析することが可能になりました。
今回の研究で高エントロピー合金は、量子力学の基本原理である不確定性原理を通して、格子振動が激しくなるほど超伝導になる温度が低くなることが発見されました。本研究は高エントロピー合金超伝導体の特性を新たに理解し、実用性向上に向けて前進をもたらしました。
高エントロピー合金とは?
従来の「合金」とは鉄やニッケルなどの金属に他元素を少し混ぜて必要な特性を引き出したものでした。
(例)自動車のエンジン部品→鉄が主成分の合金
(例)航空機のジェットエンジン→ニッケルが主成分の合金
高エントロピー合金は複数の元素を同程度の割合で混ぜた合金で、乱れが大きい(エントロピーが高い)高エントロピーと呼ばれます。
- 2004年に提案された新しいカテゴリーの材料である。
- 機械的特性が従来の合金より優れている。
- エネルギー貯蔵、放射線耐性、腐食耐性、生体適合性、触媒、熱電変換・・・豊富な機能性を持つ。
- 世界中で高エントロピー合金材料開発が盛んに行われている。
新しい高エントロピー合金超伝導体HfMoNbTiZr
この研究は高エントロピー状態と超伝導の関係性を調べ、高エントロピー合金の超伝導体としての特性分析や実用性向上につながる機能性の理解を目的としています。ただ、代表的な高エントロピー合金(5元系等モル)についてはこれまでHfNbTaTiZr, HfNbReTiZr, HfNbTaTiVしか超伝導体としての報告がありませんでした。今回HfMoNbTiZrが超伝導になることを発見し、エントロピー状態を揃えたうえで物質間の比較が可能となりました。
高エントロピー合金超伝導体の新たな特性発見
新しい高エントロピー合金超伝導体HfMoNbTiZrを発見したことにより、高エントロピー合金超伝導体間の比較を初めて行うことができました。4つの高エントロピー合金超伝導体の超伝導転移温度について調べたところ、高エントロピー合金はデバイ温度が上昇して格子振動が激しくなるほど、超伝導になる温度が低くなることが分かりました。今後の高エントロピー合金超伝導体の設計に重要な指針を与える発見で、本研究は高エントロピー合金の機能性を深く理解し、さらに向上させるために役立つと期待されます。
取材のお申込み・本件発信部署
福岡工業大学 広報課(担当:池田)
TEL:092-606-0607
取材のご依頼は下記申込書(PDF)をご記入のうえ、
FAX(092-606-7357)またはメール(kouhou@fit.ac.jp)にて本学広報課にご送信ください。